沖縄では5月のゴールデンウィーク終了後すぐ、梅雨の季節が始まります。対照的に、東北地方では6月半ば頃から、湿気を帯びたじめじめした気候になり、本格的な梅雨入りを迎えることが一般的です。この時期は、雨が頻繁に降り、湿度が高くなるため不快感を感じやすいです。
梅雨の時期には、「梅雨入りしました」「梅雨明けしました」という天気予報がよく耳にしますが、この際に使用される「平年に比べて2日早い」「例年より3日遅れ」という表現にはどのような意味があるのでしょうか?
一般に「平年」とは過去30年間の平均を指し、「例年」とはより一般的な過去のデータに基づく期間を示しますが、この二つの用語には細かな違いが存在します。
本記事では、天気予報でよく聞く「平年」と「例年」の違い、地域による梅雨の日数の違い、梅雨明け後に感じる気温の上昇について詳しく解説します。
梅雨入りと梅雨明けの期間についてよく耳にする「平年」と「例年」の違いは何か?
天気予報では「平年」と「例年」という言葉を頻繁に耳にします。これらの言葉は一見同じように感じられるかもしれませんが、実際には微妙な差があります。
「平年」は直近30年間の平均値を、「例年」はより長期間の過去のデータを基にした一般的な期間を指します。これらの違いを理解することで、天気予報の情報がより具体的に感じられるでしょう。
「平年」と「例年」の違いについて
「平年」の定義
「平年」とは、文字通り平均の年を意味し、気候や農作物のデータなどに基づいた平均値を指します。
この言葉は、通常の状態や普通の状態を示す際にも使われることがあり、「平年並みの気温」という表現で使われることが多いです。これは、平均と普通が同義であると理解されることからです。
「例年」の意味
「例年」とは、主に人間の社会活動に関連する一般的な習慣や常識を指し、通例や伝統的な行事に用いられることが多いです。
例えば、「例年、盆踊りは特定の公園で開催されるが、今年は異なる場所で行われる」という使用例があります。気候や季節の文脈で使われる際は、「例年の気候」として、毎年似たような気象パターンを示す意味で用いられます。
平年のうるう年における意味
平年は一般的に気候や農作物のデータに関連して使用されますが、閏年(うるうどし)との関係でも「平年」という語が使われます。これは、365日で構成される通常の年を指し、366日の閏年と区別されます。閏年が「平年ではない」と表現されることもあり、この違いは年間の日数に基づいています。
梅雨の期間と地域差
梅雨の季節は、湿気が高くてジメジメした日が続き、不快感を感じることが多いですね。実は、梅雨の始まりと終わりは地域によって異なります。南部地域から始まり、梅雨前線が徐々に北へと移動していく様子は、天気予報の天気図で確認できます。この前線が北上することにより、沖縄から順に各地で梅雨入りし、次第に梅雨明けへと向かいます。
気象庁の定義する「平年」
「平年」という用語は気象庁により定義されており、主に天気予報で用いられます。この平年の基準は、過去30年間の気象データの平均値に基づいています。気象庁はこの平均値を用いて、例えば「平年より3日遅い」といった表現で天気予報での異常を報告します。また、この平均値は毎年更新されるわけではなく、10年ごとに過去30年のデータを基に再計算され、「平年値」として新たに設定されます。
地域別の梅雨入りと梅雨明けの平年値
2010年に気象庁が発表した平年値を基に、日本の各地域での梅雨入りと梅雨明け、それぞれの期間をまとめてみました。
地域 | 梅雨入り開始日 | 梅雨入り終了日 | 梅雨期間の日数 |
沖縄 | 5月9日頃 | 6月23日頃 | 46日間 |
奄美 | 5月11日頃 | 6月29日 | 50日間 |
九州南部 | 5月11日頃 | 6月29日頃 | 45日間 |
九州北部 (山口県を含む) | 6月5日頃 | 7月19日頃 | 45日間 |
四国 | 6月5日頃 | 7月18日頃 | 44日間 |
中国 (山口県を除く) | 6月7日頃 | 7月21日頃 | 45日間 |
近畿 | 6月7日頃 | 7月21日頃 | 45日間 |
東海 | 6月8日頃 | 7月21日頃 | 44日間 |
関東甲信 | 6月8日頃 | 7月21日頃 | 44日間 |
北陸 | 6月12日頃 | 7月24日頃 | 43日間 |
東北南部 | 6月12日頃 | 7月25日頃 | 44日間 |
東北北部 | 6月14日頃 | 7月28日頃 | 45日間 |
日本各地で梅雨の始まりと終わりの時期には大きな違いがあります。
例えば、沖縄では6月23日ごろに梅雨が明けるのが一般的ですが、東北北部では7月28日ごろまで梅雨が続くことがあります。これにより、地域によって梅雨の期間に1か月以上の差が生じることが確認できます。
また、梅雨の全体的な日数はほとんどの地域で約43日から45日間とほぼ一致していますが、奄美地域のみ約50日と他の地域に比べて一週間ほど長く梅雨が続く傾向があります。
北海道に梅雨は存在しないのか?
梅雨の時期についての一般的なデータを見ていると、北海道が含まれていないことに気づく人は多いかもしれません。これは、北海道には梅雨入りや梅雨明けの現象が見られないためです。通常、梅雨とは特定の前線が一定期間その地域に留まることを指しますが、この前線は北上する途中で弱まり、北海道に到着した時にはほとんど力を失ってしまいます。その結果、前線は北海道に少しの間雨をもたらすかもしれませんが、梅雨と呼べるほどの状態には至らず、実質的には「梅雨入りや梅雨明けがない」と言えます。
しかし、気象学的には公式に認められていないものの、「蝦夷梅雨」と呼ばれる現象が北海道で観測されることがあります。これは2週間程度続く曇りがちな天候を指し、一般的な梅雨とは異なり、毎年必ず発生するわけではありません。そのため、蝦夷梅雨は本来の梅雨とは別の現象と考えられています。
梅雨明けとそれに伴う急激な暑さの理由
梅雨が終わりを迎えると、日本では夏が本格的に始まります。梅雨の期間は長く、ジメジメとした湿気を帯びた天気が続くため、その終わりは多くの人にとって待ち望まれるものです。しかし、なぜ梅雨明け後は気温が急に上昇するのでしょうか?
梅雨とは、暖かく湿った空気と冷たく乾燥した空気がぶつかり合うことで形成される「梅雨前線」による気象現象です。梅雨が明けるというのは、この暖かい空気が優勢となり、冷たい空気を北へと押し返すことに成功した結果です。
このため、梅雨前線が消失し、南からの暖かい空気が広範囲に渡って支配的になるため、気温が急上昇し、夏の暑さが到来します。
「平年」と「例年」の違い:まとめ
天気予報でよく耳にする「平年」と「例年」の言葉について、その意味を解説しました。
これらの言葉を理解することで、天気予報をより深く理解することができ、日常生活での利用に役立つでしょう。